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COLUMN | 2022.3.22

72の法則

突然ですが、クイズです

10万円の借入れがあり、借入金利は複利で年率20%です。返済をしないと、この金利では、何年で残高は倍になるでしょうか。
  1. 2年未満
  2. 2年以上5年未満
  3. 5年以上10年未満
  4. 10年以上
  5. わからない

簡単に答えがわかった方は本記事を読む必要はないかもしれません。しかし、すぐに答えがわからなかった方やご自分のお答えに自信が持てない方は、ぜひ最後までお付き合いいただきたく思います(笑)

実直な解答

ひとまず、真面目にクイズの答えについて考えてみましょう。複利については、こちらの記事「単利と複利」で学びましたね。この記事では、複利で預金する場合について考えていますが、複利で借り入れを行う場合も考え方は全く同じです。すなわち、

元本\(A\)円を金利\(r\%\)で複利で(毎年利子を元本に繰り入れる形で)\(n\)年間借り入れる場合、\(n\)年後の借入残高は
$$A(1+r\%)^n$$
となります。

今回は、元本\(A=10万円\)、借入金利\(r=20\%\)なので、\(n\)年後の借入残高は\(10(1+20\%)^n万円\)となります。具体的に、計算すると以下のようになります。

借入期間年初の元本利息年末の借入残高
1年10.0万円2.0万円12.0万円
2年12.0万円2.4万円14.4万円
3年14.4万円2.9万円17.3万円
4年17.3万円3.5万円20.7万円
5年20.7万円4.1万円24.9万円
6年24.9万円5.0万円29.9万円
7年29.9万円6.0万円35.8万円
8年35.8万円7.2万円43.0万円
9年43.0万円8.6万円51.6万円
10年51.6万円10.3万円61.9万円
元本10万円、金利20%のもと、複利で借り入れた場合

上の表から、借入期間が3~4年で借入残高は20万円(当初元本10万円の2倍)を超えることがわかります。したがって、クイズの答えは、2.(2年以上5年未満)です。でも、答えにたどり着くまでかなり大変な思いをしました。実は、本問を一瞬にして解く方法があります。それが以下で紹介する72の法則です。

72の法則とは?

早速ですが、みなさんは72の法則をご存じですか?

これは、自然科学(物理学や化学等)の法則ではないため、おそらく中学校や高校で習うことはないと思います。ただ、資産運用や借金をするうえで、72の法則を知っていると便利なことが多いため、本記事で解説したいと思います。

結論から申し上げると、72の法則は、元本が2倍になるような「年利」と「年数」が概算できる法則です。

これだけだと、おそらく何を言っているのか全く分からないと思いますので、以下で具体的に説明します。なお、数式を用いた簡単な説明を記事の最後に付けておりますので、数学が得意な方はそちらをご参照ください。


今、元本\(A\)円を複利で2倍の\(2A\)円に増やす、すなわち、\(A(1+r\%)^n=2A\)、となる状況を考えます。両辺を\(A\)で割り算すると、\((1+年利)^{年数}=2\)、という式が得られます。この式が72の法則の基になる関係式です。

年利と年数の関係

先ほどの関係式をグラフにすると、以下のようになります。

年利と年数の関係

上のグラフをみると、年利が大きくなるにしたがって、年数が短くなっていることがわかります。今、資産を2倍にするような年利と年数の関係を考えていることを思い出しましょう。これは、年利が高い銀行にお金を預けた方が、2倍にするのに必要な預入期間は短くなることを意味しています。

72の法則

このグラフって中学生のときに勉強したあるグラフに似てませんか?そう反比例のグラフです。反比例とは、2変数の積(かけ算の答え)が一定であるような関係(中学校では、\(xy = a\)と習ったと思います)でした。この場合、変数は年利と年数なので、両者の積が一定となることが予想されます。では、積って具体的にいくらになるのでしょうか?

答えは、もちろん72です!つまり、年利×年数=72という反比例関係を「72の法則」と言うのです。実際に、72の法則を先ほどのグラフに追加してみます。

72の法則

先ほどのグラフとほとんど一致していますね!

この72という数字を、仮に69や70に変更しても、実は結果は大きくは変わりません。72に決まった理由は、72は約数を多く含むため(つまり、\(72=2^3\times 3^2\) なので、2、3、4、6、9、12、… といった、年利や年数でよく出てくる数字で数多く割り切れる数なので)、使いやすかったからではないかとみられています。

なお、文献上は15世紀のイタリアの書物に登場したのが最初であるとされていますが、誰が72の法則を発見したかについては、定かではないようです。

簡単な解答

72の法則を使って、冒頭のクイズを解いてみましょう。今、年利が20%だったので、72の法則から、\(20×年数=72\)という式が成り立ちます。これを解くと、\(年数=3.6年\)なので、一瞬にして、2.(2年以上5年未満)が答えであるとわかりました!

72の法則を使ってみた

折角なので、色々な金融商品や借金に対して、72の法則を使ってみましょう。なお、前回の記事では、銀行に預けて運用しましたが、株式や債券で運用しても、72の法則はもちろん成立します(ただし、このような投資には、元本割れのリスクがありますので、ご注意ください!)。現実の金融商品等で運用した場合の結果は、以下の通りです。

金融商品等定期預金先進国債券世界債券世界株式借入上限金利
年利(%)0.0020.5124920
2倍にするのに
必要な年数(年)
36,00014472361883.6
いつ運用開始すれば
今2倍になっているか
旧石器時代明治昭和昭和平成平成平成~令和
72の法則の適用例(※各金融商品の年利は直近の市場動向を踏まえたイメージです)

銀行に預けると、資産を2倍にするのに36,000年もかかっちゃうんですね!!株式でうまく運用したとしても、10~20年は必要です…この結果は、税金の影響を無視したものなので、実際に2倍にするのには、もっと時間を要することになります。いやー、運用って難しいですね…

一方、合法的な上限金利でお金を借りると、たったの3.6年で借入額が2倍になってしまいます(先ほどのクイズが実はこの場合に対応しています)。

なんか世知辛い世の中ですねえ…

(これだけ毎日「過払い金のCM」が流れているので、みなさんも既にご存じかもしれませんが、)日本では、法律が改正され、2010年6月に借入れ金の上限金利が引き下げられました。現在、上限金利は、借入金額に応じて年15%~20%となっています。

日本貸金業協会( https://www.j-fsa.or.jp/association/money_lending/law/maximum_interest_rate.php

クイズの背景

最後に、冒頭のクイズの背景についてご説明します。

この問題は、金融広報中央委員会(事務局:日本銀行情報サービス局)が定期的に実施している金融リテラシー調査(直近では、2019年に全国の18~79歳の個人25,000人を対象に実施)で出題された問題の一つです。特に、本問は、米国調査やOECD調査などの海外のリテラシー調査とも比較可能な由緒正しい問題です。さて、気になる正答率はと言うと…

回答2016年調査2019年調査
1. 2年未満2.7%3.3%
2. 2年以上5年未満
  (正解)
40.6%42.0%
3. 5年以上10年未満16.0%15.8%
4. 10年以上2.6%2.6%
5. わからない38.1%36.4%
「72の法則」に関する問題についての回答比率(出所:金融広報中央委員会<事務局:日本銀行情報サービス局> https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2019/

なるほど…前回調査比やや改善が見られたと言え、正答率は50%以下なんですね。

筆者が個人的に気になったのは、本問の正答率の低さではなく、5. (わからない)を選んだ人の割合が1/3を超えている点です。ちなみに、この傾向を日本人の特徴であると指摘する向きもあるようです。実際、2019年の金融リテラシー調査において、「金融知識に自信がある人」(「とても高い」と「どちらかとかいえば高い」との合計)の割合は、米国の76%と比べ、日本はわずか12%でした。

たしかに、国民性の違いもあると思いますが、私は、おそらく金融教育の遅れが大きく影響しているのではないかとみています。先ほども述べましたが、「72の法則」って学校で習った記憶ないですしね。ある意味、当然の結果かもしれません。

わが国の金融教育の遅れについては、政府もかねてより高い問題意識を持っていたようで、本年4月から高校の家庭科の中で金融教育が始まります。本ブログでも、難解なファイナンス理論等の明快な解説はもとより、こうした「知ってると得する(or 知らないと損する)」類いの金融知識を今後も積極的に配信する予定です!引き続きよろしくお願いします。

まとめ

本記事では、72の法則について紹介させて頂きました。72の法則は、元本が2倍になるような「年利」と「年数」が概算できる法則であり、具体的には、年利×年数=72、でしたね!

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

(参考)数式を用いた説明(大学1、2年生レベルの数学が必要)

数学的に72の法則を導出してみます。途中でTaylor展開が登場するため、正しく理解するには、大学1、2年生で学習する数学の知識が必要となります。

元金\(A\)が2倍となるような年利\(r\%\)と年数\(n\)は、以下の関係式を満たします。

$$A \left( 1+\frac{r}{100} \right )^n = 2A $$

まず、両辺を\(A\)で割ります。

$$\left( 1+\frac{r}{100} \right )^n = 2$$

次に、両辺の自然対数をとります。

$$n\ln \left( 1+\frac{r}{100} \right ) = \ln 2$$

1に対して十分小さい\(r/100\)を考えているので、左辺は1次のTaylor展開:\( \ln \left( 1+\frac{r}{100} \right ) \simeq \frac{r}{100} \)で近似できます。その結果、上式はこのように書けます。

$$n \frac{r}{100} = \ln 2$$

\(\ln2 \simeq 0.69317\)に注意して、両辺100倍します。

$$nr = 69.317$$

69.3147を72に切り上げると、「72の法則」の完成です。

$$n r = 72$$