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COLUMN | 2022.2.22

資産運用のすすめ(2)不確実な方法 

執筆者
岡野 大
代表取締役 最高経営責任者(CEO)

こんにちは、sustenキャピタル・マネジメント代表取締役の岡野です。

前回の記事「資産運用のすすめ(1)確実な方法」では、資産運用の基本は確実な方法と不確実な方法の組合せであること、そしてその確実な方法の代表は銀行預金であり、不確実な方法は投資であることについてご紹介しました。この記事では、後者の投資についてお話していきます。 

資産運用における投資の役割 

資産運用において、投資は購買力の育成を担う重要なパートです。確実な資産運用方法である銀行預金を守りと位置付けるならば、投資は攻めと言えます。
もし将来、物価が下がり続け、日本円の価値が国際的に下落しないことを断言できる人であれば、あえて投資のことを考えなくていいとも言えます。しかし、そのような見通しに確信が持てない、あるいは将来の不測の事態に備えるためでは、守り一辺倒になることなくバランス良く攻めること考えるべきでしょう。「攻撃は最大の防御」とまでは言いませんが、うまく投資を利用できれば、物価や通貨の価値をめぐる多少の混乱があろうとも自らの購買力を守ることができます。 

繰り返しですが、投資はプラスのリターンが望めるとはいえ、ひとつの例外もなく将来の結果が不確実な行動です(逆に言えば、結果が確実なのであれば、それはもはや投資ではありません。)。このため確実な資産運用である銀行預金を軽視して、不確実な攻め一辺倒になることは、思わぬ失点を招くことになりかねません。サッカーで、11人のメンバー全員をフォワードにするのも、あるいは全員をディフェンダーにするのも最適解ではないのと同様に、100%投資や100%銀行に回すのはどちらにおいても不測の事態に対する脆弱性があります。何事もバランスを欠いては失敗するときに想定外の痛手を被ります。 

どうしても投資の話をするとき、うまくいったかうまくいかなかったかのように0か100かの二元論になりがちなのは残念なことです。あるいはメディアでは常に「どの投資が1番儲かった。」、「騰落率ランキングはどうだった。」、「今が底値、投資を始めるチャンス。」といったヘッドラインが紙面をにぎわせていますね。こうした文言は、“悪魔のささやき”です。そもそも資産運用における投資は、結果を誰かと競うゲームではありません。1番の結果を追求するスポーツではないのです。将来どのような社会情勢になろうとも、自分の見通しに沿った形で、購買力を守り育てることを目的とすべきです。とはいえ普通、将来を完璧に見通せる人なんていませんから、どちらかといえば資産運用においては1番良い結果を追求するよりも、1番後悔しにくい方法を追求するのがベターと言えます。 

不確実ながらプラスのリターンを期待するとは 

投資は、将来の結果が不確実ではありますが、プラスのリターンが期待できます。この言葉、どこか矛盾しているように感じる方もいらっしゃるかもしれません。損することもあるのに、プラスになることが期待できるとはどういうことか・・・これは、サイコロを思い浮かべてください。 

サイコロを1回振ったときに、「期待できる目の数は?」と聞かれれば、3.5の目が出ると想定することは簡単だと思います。1から6の目が均等に出る可能性があるので、目の数の単純平均をとって3.5という計算です。一方で、出る目の期待値が3.5とはいえ、サイコロを振れば1が出ることもあるし6が出ることもあります。もっと言えば、サイコロには1から6の目しか書かれていませんので、どれだけサイコロを振ってもこの期待値である3.5がそのまま得られることはありません。この「どの目が出るかはわからないけど、平均的には3.5の目が出ることが期待できる」状態が、投資の「増えるか減るかはわからないけど、平均的にはプラスのリターンが期待できる」こととまさに同じ状況だとお考え下さい。
現実的には、投資はサイコロほど単純なものではなく、むしろ何が書かれているのかわからないサイコロを振るようなものです。ただ、どのような結果になるかは誰にもわからないものの、その期待値はプラスだと考えられています。なぜ期待値がプラスになると想定できるかについては、非常に深いテーマでもあるので別の記事でご紹介予定です(そこが一番大事なのに、と感じられた方はすでにかなり資産運用についてご理解のある方とお見受けします。)。

いったんこの記事では、投資はプラスのリターンを生み出せるものだと仮定して、結果が不確実である面に注目しましょう。ある投資行動にリターンがあるかないかはある種の哲学論争をも巻き起こすテーマになりますが、結果が不確実であることに異論を唱える人はいません。
結果が不確実であることを、金融用語では「リスクがある」と表現します。もしかしたら増えるかもしれないし、減るかもしれない。増えるにしろ3増えるのか5増えるのかわからないという状態が、リスクがある状態です。「すべての投資の結果は不確実である」を言い換えれば、「すべての投資はリスクを伴う」と言えます。どのくらいリスクが伴うかを数字で表現するために様々な(定量的)評価方法が考案されてきましたが、広く使われるのはその結果のばらつき具合を数値化するものです。一般に、ハイリスクと呼ばれる投資行動は、結果のばらつきが大きく、ローリスクと呼ばれる投資行動はその逆に、結果のばらつきが小さいものをいいます。

不確実な結果に対して、後悔しづらくする方法 

さて、投資は不確実だ、すべての投資にはリスクがある、なんてことを読み続けるとやっぱりなんだか怖いものに感じますね。いくら投資をすれば購買力の育成を望めると言われても、結果が不確実であれば投資することが怖くなるのは正しい反応です。なかには自分はサイコロを振ってもよく1を引きがちだから、サイコロの出目の期待値が3.5と言われたって気持ち悪いという方もいらっしゃると思います。そんな方にご紹介したいのは、投資のリスクを完全に消すことはできないものの、実は投資行動の結果にたいして後悔しづらくする方法があるということです。 

その方法のひとつが長期投資です。
サイコロの例に戻りましょう。1から6の目が書かれているサイコロを1回振ると、もしかしたら1が出るかもしれないですし、6が出るかもしれません。結果にリスクがあります。このサイコロを振ることに対して、後悔しづらくする方法と言えば、何度もサイコロを振り続けることです。何度もサイコロを振っていけば、1回あたりの出目の値は3.5に近づいていきます。3回振ったくらいでは、3回とも1が出ることはよくあることだと思いますが、10回振って20回振って・・・と振る回数を増やしていくと、1回あたりの出目の値はどんどん3.5に近づいていくことが知られています。
投資にも同じことが言えます。投資を始めてすぐに成果が得られる保証はなくマイナスになることもありますが、長く投資を続けることでプラスのリターンを得られやすくなるのです。 

もう一つ投資行動の結果に対して後悔しづらくする方法があり、それは分散投資です。
こちらもサイコロを使って考えることができます。さきほどまでは、同じサイコロを何度も振ることを考えましたが、次に考えるのは1度に振るサイコロの数を増やすことです。1度に1つのサイコロを振るのではなく、同時に複数のサイコロを振って、その出る目の平均を取ります。そうすると、1つのサイコロを振っていたときと比較して、出る目の平均はより3.5に近づくはずです。3つのサイコロを振って全部1が出ることは全然あり得そうですが、6つのサイコロを振れば全部1が出ることはかなり珍しいことになります。
投資においても、何も1つのサイコロしか振ってはいけないというルールはありません。特定の資産だけで投資を行うのではなく、複数の資産や戦略に分散して投資をすることで、期待リターンを得られやすくなると言えます。 

投資行動の結果に対して後悔しづらくするには、これら長期投資と分散投資を組み合わせることがもっとも効果的です。複数のサイコロを、何度も振り続けることで、ひとつひとつの結果はばらついたとしても、長期的には期待収益に収れんしていうことを期待します。この方法をうまく取り入れることができれば、投資の不確実性を過度に恐れる必要はありません。

不確実性の不思議 

分散投資の魅力を別の表現で紹介したいと思います。
まずはテーブルの上に2つのグラスがあることを想像してみてください。片方のグラスには60℃のお湯が50ml入っており、もう片方のグラスには20℃の水が50ml入っています。この2つのグラスのお湯と水をひとつに混ぜ合わせるとどうなるでしょうか。正解は、ご想像の通り40℃のぬるま湯が100mlできます(ナントカ断熱過程だとか難しい話はこの際無視しましょう)。算数的には、60℃x50ml + 20℃x50ml = 40℃ x 100mlですね。 

それではこれを投資の世界に置き換えてみます。60のリスクを持つAという資産50円と、20のリスクを持つBという資産50円を混ぜ合わることを考えてみてください。どうなると思いますか?(このリスクの大きさの定義は、結果のばらつき度合だとします。)お湯と水を混ぜる感覚であれば、40のリスクを持つ資産が100円できるはずですよね。ところが投資の世界では不思議なことが起こります。Aという資産とBという資産が、まったく同じ性質を持つ資産であれば混ぜ合わせた後のリスクの大きさはやはり40になりますが、少しでも違う性質を持つ資産であれば混ぜ合わせたリスクの大きさは必ず40よりも小さくなるのです。もっと言うと、60のリスクと20のリスクを混ぜて、合計リスクの大きさが20以下になることすら起こりえます。これは数字の記載ミスではありません。リスクが下がるということは、結果のばらつきが減るということであり、投資行動による後悔する可能性も下がるということが言えます。
不確実性を混ぜ合わせると、結果的に不確実性が小さくなることはにわかには信じがたいかもしれませんし、想像しづらいですよね。私自身、この考え方を知ったときには目からウロコが落ちるようでした。しかしこの不思議な性質こそが分散投資の神髄であり、魅力でもあります。そしてこの投資の性質を突き詰めて考えたのが、現代ポートフォリオ理論とよばれる投資理論です。理論に基づいた投資をしていけば、完全にリスクをなくすことは難しくとも、結果のばらつきを合理的に抑えることができ、将来の後悔を小さくすることが可能になります。

購買力を守り育てるための資産運用 

現代ポートフォリオ理論では、投資する際に「何をいつ買っていつ売るべきか」のようなことは教えてくれません。世の中にあふれる投資本に書かれているような、「自分だけが人よりも安く買って高く売る」「賢い人だけが未来を見通すことができる」なんてことは、効率的な世界においてはできないというのが大前提です。ですので冒頭に“悪魔のささやき”と書いたように、メディアを賑わす「どの投資が1番儲かった。」、「騰落率ランキングはどうだった。」、「今が底値、投資を始めるチャンス。」という文言は、ほとんどすべて占いの域を超えません。 

すこしがっかりされてしまったでしょうか。
しかし基本に立ち返ってください。投資は、一番を競うスポーツではありません。大切なのは、自らの見通しに沿って、自分の購買力を守り育てることです。その点、現代ポートフォリオ理論では、未来が見通せる特別な人を前提にしません。未来が不確実なのを前提に、もっともリスクを抑えてリターンを高めるにはどうするべきかということが研究されています。逆説的ですが、未来のことはわからないと前提してくれた方が、なんだか納得できませんか? 

投資は例外なく不確実です。ですが、理論に基づいた分散投資や長期投資を実現することでその不確実性の影響を低減し、購買力を育成することが期待できます。投資は不確実ではありますが、将来の社会情勢や環境もまた同様に不確実です。何事にも一辺倒になることなく、どんな未来になろうとも、自分の購買力を守ることができるように資産運用には適度に不確実性を取り入れることをおすすめします。

執筆者
岡野 大
代表取締役 最高経営責任者(CEO)

2012年ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント入社。戦略株式運用部(ヘッジファンドチーム)にて数百億円規模の株式、デリバティブ、為替等の投資判断を行った。ポートフォリオ・マネージャーとして海外の機関投資家のために運用を行ってきた一方で、日本の個人投資家のために品質の高いサービスを提供したいと思い続け、2019年7月株式会社sustenキャピタル・マネジメントを創業、代表取締役CEOに就任。東京大学大学院工学系研究科修了(修士)

2012年ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント入社。戦略株式運用部(ヘッジファンドチーム)にて数百億円規模の株式、デリバティブ、為替等の投資判断を行った。ポートフォリオ・マネージャーとして海外の機関投資家のために運用を行ってきた一方で、日本の個人投資家のために品質の高いサービスを提供したいと思い続け、2019年7月株式会社sustenキャピタル・マネジメントを創業、代表取締役CEOに就任。東京大学大学院工学系研究科修了(修士)