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COLUMN | 2022.4.19

効率的とは

今回は「市場の効率性」についてご紹介したいと思います。

効率的な市場とは

金融資産のポートフォリオ構築を数学的・定量的に解く理論として現代ポートフォリオ理論というものがあります。その現代ポートフォリオ理論のいろはの「い」と言えるものの一つに「効率的市場仮説」というものがあります。効率的市場仮説とは市場が効率的であるという仮説ですが、それでは「市場が効率的である」とはどのような状態でしょうか。

そもそも金融における市場(マーケット)とは、株式や債券、為替などの証券や商品を売り手と買い手が取引する場所のことです。証券を取引する市場は証券取引所(金融商品取引所)と呼ばれ、日本では東京証券取引所などがそれにあたります。市場で取引されている株式などの証券価格が、入手可能なすべての情報を「完全に・速やかに・理論的に」反映して価格付けされている時に「市場が効率的である」といいます。つまり「現在の証券価格は、すべての情報を用いて推定された証券価値と同等である。すなわち、期待リターンは投資家がリスクを取った分に見合うだけの分と同等である。」と表現されます。直感的に言い換えると「誰も市場を打ち負かすことはできない(市場平均のリターンを上回ることができない)。」となります。効率的な市場ではリスクを取ることでそれに見合ったリスク・プレミアムを得ることができるということです(「効用関数とリスクプレミアム (2)」で触れている内容と同じですね)。

完全に効率的な市場の中だと、投資家はアクティブ運用(市場平均を上回る投資成果を目指す運用)では勝つことができず(市場平均のリターンを上回ることができず)、パッシブ運用(幅広く市場に投資するインデックス投資、市場平均と同程度の投資成果を目指す運用)を選択せざるを得ない状況になります(詳細は次回ご説明したいと思います)。

それでは現実の世界で本当にこの効率的市場仮説は成り立つのでしょうか?また、どうしたら効率的かどうかわかるのでしょうか?市場の効率性を判断する一つの材料は、情報が公に広まり始めてから証券価格に反映されるまでの時間です。非常に効率的な市場だと情報が証券価格に反映されるまで非常に短時間です。もし情報が価格に反映されるまでの時間が非常に長ければ、先に情報を知っている投資家は他の投資家よりも高いリターンを得る事ができます。

ここで、すでに公表されている情報はすでに証券価格に織り込まれているため、将来の証券価格にほとんど影響を及ぼさないことに注意しましょう。例えば、「トヨタ車の新モデルがヒットているとニュースで言っているから、きっと株価は上がっていくだろう!」と考えトヨタの株を買ったところで、もう手遅れになっているのがオチです。なぜなら、市場参加者は何年も前からその新モデルのことを知っていて発売後の売れ行きも把握しており、すでに今の株価にはその新モデルの収益インパクトは織り込まれていると考えられるからです。このようにすでに広まっている情報は証券価格に影響は与えず、新しい情報のみが証券価格に影響を与えます。ある企業が市場で想定されていたよりも好調な業績を発表した場合には、これまで期待されていた業績よりも高い業績が証券価格に反映されてその企業の株価は上昇するでしょう。

市場価値と本質的価値

証券価格と市場の効率性について触れましたが、次に証券価値について考えてみます。市場価値とはその名の通り市場における現在の証券価格を指します。本質的価値とは証券のファンダメンタル価値とも言い換えることができ、その証券に関する入手可能なすべての情報(ここではインサイダー取引は禁止されていることを仮定して公開情報のみを指します)を使って導き出された価格のことを言います。

本質的価値は明示されているものではないため、確実な値を知ることはできず、投資家はその値を様々な情報や計算によって推測します。証券が複雑になればなるほど本質的価値の推測は困難になりますし、新しい情報が出回ればすぐに変わってしまうものです。

完全に効率的な市場では市場価値は本質的価値と等しくなります(本質的価値はすべての情報を用いて推定された証券価値であり、市場価値がそれと同じ場合に市場が効率的と言いました)。逆に非効率な市場であれば市場価値と本質的価値にギャップがあるわけですから、アクティブ運用者は本質的価値が市場価値よりも高い証券(割安な証券)を購入し、本質的価値が市場価値よりも低い証券(割高な証券)を売却することになります。アクティブ運用者のような売買によって市場価値が本質的価値に近づいていくことで、効率的な市場に近づいて行きます。高い取引コストや情報の欠如などによってこのようなアクティブ運用者の取引が制限されてしまった場合、市場価値が本質的価値に収斂せず市場は非効率なまま放置されることになります(フェアバリューについては「欲望を善に変換するしくみ」でも解説しています)。

市場の効率性に影響を与える要因

実際の市場は完全に効率的でも完全に非効率的でもないと言われています。では市場の効率性に影響を与える要因とはなんでしょうか?

市場参加者の数:市場に参加する投資家やアナリスト、トレーダーの数が多いほど、その市場の効率性は上がるでしょう。市場参加者が多いほど、アクティブ運用のように本質的価値に基づく取引が増えることで市場価値が本質的価値に近づきやすいと考えられるからです。投資家の数は一定ではなく、時代によっても変わるでしょうし、国によっても市場参加者の数は異なります。例えば、外国人投資家の取引を制限している国の市場は、制限していない市場に比べて市場参加者が少ないため市場の効率性は下がると考えられます。

情報の手に入れやすさ:投資家に出回る情報が多いほど、その市場の効率性は上がるでしょう。情報が多いほど本質的価値の推測は正確になり、投資家はその推測された本質的価値に基づき証券の売買を行うため、市場価値は本質的価値に近づいていきます。ニューヨーク証券取引所のような先進国市場では投資情報が数多く存在するため(例えば、ネットなどで情報をすぐ手に入れることができる)、市場は非常に効率的です。一方で、新興国市場は手に入る情報に限りがあるため、市場の効率性は下がります(市場価値と本質的価値に乖離が生じやすい)。

情報へのアクセスに偏りがあると情報を持つ投資家がより有利になります。企業は投資家よりも自社についての情報は多く持っていますから市場取引で有利になります。情報の公平な利用の観点から、多くの国では規制によって企業が公開する情報に偏りが出ないようにしています。例えば、企業が親密な証券アナリストにのみ情報を提供することを禁じ、提供した場合には同じ情報をHP等で公開することを義務付けていたりします。また、企業の重大なインサイダー情報(企業の未公開情報のこと。企業の買収に関わる情報などが該当)を持っている投資家は市場で取引することを禁じられています。

取引の障害:市場の取引に障害があれば裁定取引が機能せず、市場価値と本質的価値が乖離したままになってしまいます。例えば、空売り(割高と考えられる証券を借りて市場で売却し、所定の期間内に当該証券を買い戻して返済する取引)が認められていない市場の効率性は下がってしまいます。空売りにより過大評価された市場価格を抑制することができるため、市場価値が本質的価値に近づくことになります。貸株が禁止されていたりその費用が大きい場合には投資家は空売りができずに市場の効率性は下がると考えられます。

取引や情報に係るコスト:情報収集や企業分析、証券取引に係る費用が、裁定取引(本質的価値と乖離した市場価値への投資)から得られる見込み収益よりも高いと判断されると、投資家はその証券への投資をやめてしまうかもしれません。そのような場合、市場価格は非効率なまま(本質的価値と乖離したまま)放置されます。

まとめ

今回は市場の効率性についてご紹介させて頂きました。市場価値と本質的価値の乖離が市場の効率性を読み解く指標であり、投資家の行動により市場は効率的になっていくというものでした。次回は市場の効率性とアクティブ運用、パッシブ運用の関係についてご説明したいと思います。